正常心臓における調律は、上大静脈が右心房に合流する境界付近の比較的広い領域に存在する洞結節細胞での自動的で規則的な刺激生成によって形成される。 洞結節に始まる刺激は、心房内の結節間路を通って、房室結節に伝わり、ヒス朿、プルキンエ線維を経て、心室筋を興奮収縮させる(図1-1)。

ワンポイントレッスン

 

 このように洞結節が心臓の拍動を制御し、歩調取りすることによって形成される調律が、洞調律である。ただし、体表面からの記録では、洞結節の電気的活動を捉える事はできないため、心電図上の特徴は 図1-2 に示すようになる。

ワンポイントアドバイス

 洞結節は、発見者の名前からキース・フラック結節とも呼ばれる。上大静脈が右心房へと合流する右心房上端で分界稜(crista terminalis)の後方にある特殊心筋によって出来た結節状の組織の印象がある。しかし、実際にはその付近にあって心臓の歩調取りを行うペースメーカ機能を有する細胞(洞結節細胞)は、分界稜後方の広い範囲に存在していて、結節(node)と呼ぶよりも領域と捉えた方が適切と考えられる。
 その領域は、心臓を心尖部から見上げた時、最も遠い位置に相当している。ここに起こる刺激生成とそれに続く心房内の刺激伝導様式は、房室弁から遠い心房壁から興奮が始まり、上下の大静脈口や上下左右4カ所の肺静脈口周辺の心房筋を最初に興奮させ、逆流を少なくしながら有効に心房内の血液を心室に送り込む理想的とも言える心房の機械的動きを生み出している。